漢方学会・研究会での発表論文
漢方太陽堂が、東洋医学関係の学会・研究会にて発表報告した論文です。ご覧下さい。
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【五志の憂】
2014年11月、伝統漢方研究会第11回全国大会(日本・名古屋東急ホテル)
木下順一朗
福岡県福岡市・日本
[諸言]
従来の「五志の憂」の治療では、前頭部の髪の生え際付近を反応穴として使用し治療してきた。
今回、前頭部と異なる「五志の憂」の反応穴3箇所が見つかったので報告する。
以下は判明している「五志の憂」の反応穴である。
- 「五志の憂」(前頭部髪の生え際、従来の五志の憂の反応穴)
- 「左側頭部五志の憂」
- 「左後頭部五志の憂」
- 「後頭部五志の憂」
【五志の憂の反応穴】
以下に「五志の憂」の反応穴を示す。
- 「前頭部五志憂」(従来からの五志の憂);癲癇以外の自律神経失調症・うつ病・統合失調症他、精神神経症等に反応。
- 「左側頭部五志の憂」;耳介中央部の上。桃核承気湯、牡蠣・芍薬・芒硝・真珠皮等が反応。
- 「左後頭部五志の憂」;左右の耳介上部を結んだ線より1cm弱上。抑肝散、生酸棗仁、ヤツメウナギ、新猿頭仙等が反応。発達障害、自閉症、他動性障害等に反応。
- 「後頭部五志の憂」;頚椎1(C1)より1.5cm上。甘麦大棗湯が反応。癲癇の反応部位とは異なる。
【例1】
44歳、男性
主訴:喉の閉塞感
既往歴:特になし
現病歴:一年前に発病し、病院では喘息の診断
現症:身長165cm、体重61kg。
舌は燥湿中間、苔薄い。歯切痕があり胃内停水が伺える。
冷えのぼせは無く、口渇なし。発汗多い、二便正常。
2009年6月
肺大腸経絡;半夏厚朴湯関係、茯苓飲関係にて治療開始。
少し調子が良いが、完全に症状が消失することはない。
以後5年間、半夏厚朴湯の加味方、茯苓飲の加減方、五志源、済仁等。「前頭部五志の憂」の糸練功の結果に基づいて投薬、第五頚椎の治療、考えられる様々な治療を施す。
患者は漢方治療前よりは調子が良いが、5年間の漢方治療を受け60回の投薬後も喉の閉塞感が完全に取れることはない。
2014年5月
「左後頭部の五志の憂」を発見、新猿頭仙を投薬。新猿頭仙で半夏厚朴湯証も消失する事を糸練功にて確認する。61回目の投薬となる。
2014年6月
新猿頭仙服用後、喉の閉塞感が消失。今まで最も調子が良いとの事。半夏厚朴湯証の合数も急激に改善。
その他、手洗いを何十回と行う患者さん、床に落ちている物が気になり歩けない、トイレに数時間の間に何十回と行く等の症状の患者さん達も「左後頭部五志の憂」の治療で改善しています。
【考按並びに結論】
今回発表した「五志の憂」には、一定の法則がある。
合数は夫々の「五志の憂」ごとに異なります。
1.通常とおり、「前頭部五志の憂」で合数と適応薬方を確認します。
2.残り3箇所の「五志の憂」の確認をします。
3.「左側頭部五志の憂」に反応があった場合
「前頭部五志の憂」の適応薬方に芒硝(硫酸ナトリウム可、硫酸マグネシウムは不可)真珠皮を追加すると、「前頭部五志の憂」がよりsmとなります。
もしくは「左側頭部五志の憂」で適合した薬方で「前頭部五志の憂」はよりsmとなります。
「左側頭部五志の憂」は、統合失調症系統に見られる感じがしますが、まだ検討中です。
4.「左後頭部五志の憂」に反応があった場合
新猿頭仙又はそれに類する薬方にて「前頭部五志の憂」も更にsmになります。
「左後頭部五志の憂」の反応は他動性障害、自閉症等に見られるようです。
5.「後頭部五志の憂」に反応がある場合は、「前頭部五志の憂」に反応が無くても急迫と捉え甘麦大棗湯を追加投薬します。
左後頭部五志の憂は、昨年度に谷裕一郎先生の発表した「減薬と離脱症状反応点」と督脉を挟んで対称にあります。何らかの関連がある可能性があります。
また同年に木下文華先生の発表したドパミンの分泌を促進・抑制する薬味の反応穴が「左後頭部・左側頭部五志の憂」と思われます。
【今回使用した薬味】
猿頭仙;黄連末0.65甘草末0.27大黄末0.12白シ末0.09鶏血藤末0.19香附子末0.21川キュウ末0.24山梔子末0.45牡蠣末0.16青皮末0.11蓮肉末0.5竜歯末0.12生酸棗仁末0.22芍薬末0.32真珠皮末0.15、分2~3
甘麦大棗湯エキス細粒;松浦薬業株式会社
【参考文献】
精神疾患における減薬と離脱症状反応点について;谷裕一郎/伝統漢方研究会論文集Vol7,2013
統合失調症と龍骨牡蛎の関係;木下文華/伝統漢方研究会論文集Vol7,2013