漢方学会・研究会での発表論文

漢方太陽堂が、東洋医学関係の学会・研究会にて発表報告した論文です。ご覧下さい。
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【癲癇(てんかん)】

2004年11月、伝統漢方研究会第1回全国大会(日本・兵庫県淡路夢舞台国際会議場)

木下順一朗
福岡県福岡市・日本

[諸言]

日本では癲癇の患者数が50万人以上いると言われています。癲癇は小発作または、大発作を伴うことが多く、病院での治療はこの発作を抗癲癇薬によって予防・抑制することが中心となります。
この場合、治療薬を続けていかないと癲癇大発作を起こしてしまう為、病院の治療だけでは原因を根治するまでに至りません。今回、漢方薬によって著効のみられた例を報告します。

[対象並びに方法]

例は癲癇患者3例となります。
西洋薬を服用又は西洋医学的治療をしていたが発作が発現したり効果の明確でなかった例です。四診により癲癇の治療点を4箇所確認後投与し、投与前後の自覚症状の改善と他覚的改善を基に効果判定を行いました。

例1:23歳、男性

主訴:癲癇大発作
既往歴:特記すべきことなし。
現病歴:8歳のときに癲癇大発作、その後半年の間に4回の発作があり、その後病院の薬を変えてからは3年間発作がなかった。昨年のH15年9月に発作があり今年の1月と3月末にも発作があった。病院での診断は症候性部分発作。
現症:身長171cm、体重65kg、飲酒は月2回~3回、小便色やや黄色い
治療経過:4月2日、糸練功で調べたところ癲癇の治療点4つを確認

  1. 脳内電圧との関係と思われる部分、臓腑病・肺・陽証、2.8合3+、清心元の証
  2. ミネラルバランスの崩れと思われる部分、臓腑病・腎・陰証、-0.5合2+、ヴァイタルゲンの証
  3. 癲癇の本治、臓腑病・胆・陽証、2合3+、柴胡桂枝湯加芍薬の証
  4. 大発作の標治、臓腑病・肺・陰証、0.5合4+、甘麦大棗湯の証

が確認されました。清心元を1日16分の1個、ヴァイタルゲンは1日2粒、柴胡桂枝湯加芍薬は湯剤として、甘麦大棗湯はエキス剤を1日2g投与

1ヵ月後

糸練功で調べたところ

  1. 脳内電圧との関係と思われる部分、臓腑病・肺・陽証、7合1+、清心元の証
  2. ミネラルバランスの崩れと思われる部分、臓腑病・腎・陰証、5.5合2+、ヴァイタルゲンの証
  3. 癲癇の本治、臓腑病・胆・陽証、4合1+、柴胡桂枝湯加芍薬の証
  4. 大発作の標治、臓腑病・肺・陰証、2.8合1+、甘麦大棗湯の証

と合数は飛躍的に改善される。漢方薬は前回と同量。

3ヵ月後

糸練功での合数は各反応点とも順調に改善。当局の漢方薬服用後は1度も癲癇の発作がないとのこと

6ヵ月後

糸練功での合数はどの合数も9合前後で安定。発作もなく体調も良好とのこと。現在も服用中で経過は良好である。

例2:41歳、男性

主訴:癲癇大発作
既往歴:特記すべきことなし。
現病歴:微熱が続き目がちらつく
現症:身長163cm、体重56kg、血圧95-55mmhg
手足が冷える、水分の摂取が多い、時々下痢や軟便、寝つきが悪い
治療経過:2月18日、糸練功で調べたところ癲癇の治療点4つを確認

  1. 脳内電圧との関係と思われる部分、臓腑病・肺・陽証、7合±1、清心元の証
  2. ミネラルバランスの崩れと思われる部分、臓腑病・腎・陰証、10合±、ヴァイタルゲンの証
  3. 癲癇の本治、臓腑病・胆・陽証、7合±1、柴胡桂枝湯加芍薬の証
  4. 大発作の標治、臓腑病・肺・陰証、8合±1、甘麦大棗湯の証

が確認されました。清心元を1日16分の1個、柴胡桂枝湯加芍薬は湯剤として、甘麦大棗湯はエキス剤1日2.3g投与

2ヵ月後

糸練功での合数は各治療点ともに順調に改善。癲癇の発作もなく体調も良好とのこと。

3ヵ月後

糸練功での合数は各治療点ともに順調に改善。癲癇の発作は起きていない。体力もついてきたように感じるとのこと

4ヵ月後

糸練功での合数は各治療点ともに10合前後で安定。血液検査を受けたところ例年になく良好。特に肝数値に関する部分は前回より改善された。

8ヵ月後

糸練功での合数は各治療点ともに10合前後で安定。病院での抗癲癇薬を8分まで減量中、現在は抗癲癇薬をこのまま減量していくことができるのか漢方薬を服用しながら様子をみている途中です。

例3:10歳、女性

主訴:癲癇大発作
既往歴:特記すべきことなし。
現病歴:昨年9月27日明け方4:00最初のひきつけ。2回目11月13日明け方4:00発作。3回目3月1日3:00発作。4回目発作のおきる前兆らしきもののみ。
現症:身長135cm、体重27kg、吐き気、便通が硬い
治療経過:4月10日、糸練功で調べたところ

  1. 脳内電圧との関係と思われる部分、臓腑病・肺・陽証、8合±1、清心元の証
  2. ミネラルバランスの崩れと思われる部分、臓腑病・腎・陰証、8合±1、ヴァイタルゲンの証
  3. 癲癇の本治、臓腑病・胆・陽証、3合2+、柴胡桂枝湯加芍薬の証
  4. 大発作の標治、臓腑病・肺・陰証、-0.2合3+、甘麦大棗湯の証が確認されました。柴胡桂枝湯を0.9g、桂枝加芍薬湯を1.7gとして柴胡桂枝湯加芍薬として投与。甘麦大棗湯1.6g投与。
2ヵ月後

大発作の標治の部分の合数が一旦上がったあと急激に下がり、発作が1度だけ出たので糸練功でみた結果、小柴胡湯合桂枝加芍薬湯に変方、小柴胡湯0.9g、桂枝加芍薬湯1.7g、甘麦大棗湯1.6g投与。

3ヵ月後

糸練功での合数は各治療点ともに順調に改善。前月、処方をかえてから発作も出なくなったとのこと。漢方薬は同量投与。

5ヵ月後

糸練功での合数は各治療点ともに10合前後で安定。発作も1度もでていないとのこと。

6ヵ月後

糸練功での合数はどの合数も10合前後で安定。発作もなく体調も良好とのこと。

[結果]

今回、呈示した3例はいずれも癲癇大発作が4つの処方をベースに改善された例です。

[考察]

病院において、癲癇大発作の治療は発作を抑制する抗癲癇薬投与以外の方法は行われていないようです。根本的な治療方法として患者周囲の環境を整え、規則正しい生活をするよう促す程度であるため薬による根本治療には未だ至っていないようです。
癲癇患者のほとんどが病院での抗癲癇薬で発作を抑制しています。しかし抗癲癇薬の副作用は、骨に対する影響が著しく幼少期は特にその骨の影響が歯に表れるようです。

漢方太陽堂では4つの箇所(糸練功上の反応点)を治療することにより、発作を出なくしています。また漢方薬を続けることによって抗癲癇薬からの離脱が可能であると考えます。
ただし抗癲癇薬の離脱は1週間に2~3回、患者とのコミュニケーションをとりながら調整するくらい慎重に行うべきであると考えます。また大発作は発熱や発汗によって脱水しミネラルが失われていくことによって誘引されるようです。水分を意識して摂ることによって発作の誘引を防ぐ重要性を患者には奨励すべきです。
漢方薬を服用しながら抗癲癇薬を離脱する過程で服用している漢方薬の減量も可能であるため漢方薬の服用を中止しても発作は発現しなくなります。
最終的には病院の抗癲癇薬、漢方薬ともに服用しなくても癲癇大発作が発現しないようになると考える為、癲癇の根本的治療方法として優位性があると考えます。