漢方学会・研究会での発表論文

漢方太陽堂が、東洋医学関係の学会・研究会にて発表報告した論文です。ご覧下さい。
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【糸練功】

2005年11月伝統漢方研究会第2回全国大会(日本・福岡国際会議場)

木下順一朗
福岡県福岡市・日本

[はじめに]

縁あり現代薬理学の世界から漢方に触れ、東洋医学の不思議さと魅力に溺れ26年が過ぎた。漢方の劇的な効果に醍醐味を感じつつ有頂天になっていた時期があった。同時に治せない患者さんに触れるたびに治療法を見出せないジレンマとの長い戦いも続いた。
糸練功に出会い新しい治療法を開発できる能力を身に付けたとき、長いジレンマのトンネルから抜け出せるかもしれないという希望が自分の中に生まれた。

【糸練功の開発】

1989年、膝関節症の患者さんの膝に触れようとした時、まだ触れていないのに手掌に熱感を感じた。ふと手背ではと思い試したが手背では膝の炎症の熱を感じることが出来ない。
その頃、毎月愛読していた「漢方の臨床」で「五気の証明法の仮説」という論文を偶然読んだ。著者は入江正先生であった。その中に「手掌にて熱を、手背にて寒を」の一文を見つけた。「これだ」という思いで入江先生の発表された過去の論文や著書を集め、それから夢中になり入江式FT(フィンガーテスト)の独習が始まった。しかし1年の猛練習を重ねたがFTにて患者さんを診ることは出来ても治すことは出来なかった。
結局、入江塾に入塾、その後卒業。それでも治せなかった。半年後、針灸の術者と漢方家とでは治療手段が異なる事に気付く。入江先生に質問状を送り教えを乞うた。「木下君が研究し発表しなさい」との入江先生のお返事。針・漢方の武器をお持ちの入江先生と漢方しかない私では術者としての立場が異なっていた。

あるとき自分が風邪の高熱で唸っている時、何とか治そうと仰向けで寝てFTをとった。寝ている状態では必然的にFTをする手は腰の横に付けた型になる。そのときのFTが異常に強く感じることに驚いた。それは現在の糸練功の合数0であり、日常私がFTを取っていたのは、糸練功の4合位であった。風邪が治るにしたがい、FTで強く感じる手の位置は腰の横から頭上に向かい上がっていった。合数の発見である。症状の重い病はFTの手が腰に近い位置で反応が強く、症状の軽い病は頭上に近い位置で反応する。

従来のFTやOT(オーリングテスト)では合数の概念が無いため、術者が一定の合数(主に4合辺り)で行うため、症状の軽い4合位の病が最も強く反応し、症状の強い0合に近い病は反応が弱く検出されていた。

また幾つもの病を同じ合数で調べるため不可解な理に合わない結果が出てくる。誰でも身体の異常が複数あるのが常である。例えば腰痛を訴える患者さんが肝炎や他の病を持っているとする。一定の4合の位置で愁訴診を使い腰の異常を調べるとする。当然手掌診も4合にて行う。しかし腰の異常が2合で肝炎の異常が4合なら手掌診の結果は目的とする腰の異常とは異なってくる。
合数を発見し飛躍的に治癒率が上昇した。しかしそれでも治せない患者さんが多くいた。
治せない原因を探るなかで自分自身の身体の異常を患者さんの病として検出していることを見つけ、その対応策を考え出す。
治さなくて良い身体の自然な反応と病的な異常とを見分ける技術を見つけ出していく。

臓器の異常でない疾患、例えば血圧などは愁訴診が取れない。入江先生が生前お教えくださった「東洋医学は体表解剖学」の信念を持ち何十人もの血圧の患者さんの身体を調べ共通の反応を追っていく。そして反応穴の発見。
糖尿病の患者さんを再発させたくなく、先天的病と後天的病の判断技術の発見。
糸練功は自分のレベルを上げるため開発したのではなかった。患者さんの病を治すために必要かつ必然的に開発・発展しなければならなかった。

【糸練功の発展】

糸練功を始め最初に気付いたことは、鼻水が止まらない小青竜湯証である。教科書とおりの小青竜湯で鼻炎が治まる人は少なく、小青竜湯証と考えられる患者さんのなかに圧倒的に小青竜湯加石膏証の人が多いということ。当時、薬局・薬店の漢方では石膏加味が困難でありそれが鳳水仙の開発となっていった。

また下痢の止まらない半夏瀉心湯証。蓄膿症が改善しない葛根湯加川芎辛夷証。次々と糸練功を用い解決していった。癲癇、クローン病、皮膚表面の真菌には消風散証、体内の真菌はヨクイニンでの治療。抗核抗体の標治は当帰散証。卵管狭窄の標治には六君子湯、その本治には駆瘀血剤。糖尿病性を含む動脈性血流障害による壊疽には補中益気湯加人参など次々と治療法を確立していった。

以前の私は治せないとき過去の文献をあさり、一薬方一薬方づつ試し試しに投薬していき時間をかけ結局治せなかった。糸練功と出会い、糸練功は私にとって正に夢のような武器となった。

ある時、妊婦さんのように腹水が貯まった肝臓癌の患者さんが来局された。当時の悪性腫瘍に対する漢方治療は十全大補湯や補中益気湯を中心とした人参剤が主流であった。人参の免疫賦活作用も多数報告例があった。人参剤を使用すると確かに一時期元気に成られ、患者さんや家族の方に喜ばれる。しかしその後、急変する例を多数経験していた。
私はこの肝臓癌の患者さんに糸練功を使い初めて菌糸多糖体を数種組み合わせ使用した。神仙1号である。10日程して患者さんが来局され病院の検査で癌腫が縮小してきたと言われた。さすがに驚いた。結局この患者さんは肝硬変で亡くなられてしまった。
これを契機に漢方太陽堂と癌との永い闘いがスタートすることとなった。
資料「悪性腫瘍と悪性リンパ腫に対する証の発見推移」を参考にしてください。

【結語】

今、思い返せば漢方に惚れたのではなく、漢方という文化を通し患者さんの身体や心が変わっていく醍醐味に惚れたのかもしれない。
先人は患者さんを通し臨床経験医学として、患者さんに対し必要性にかられ東洋医学を進化させてきた。

糸練功を技術として発展させることに力を注ぐことが目的ではないと思う。経験医学である漢方を学問として研究・勉強しても意味がない。それは、ただの物知りにすぎない。
糸練功という技術を通し患者さんに触れ、必要性に応じ糸練功が発展していくことが本来の姿かもしれない。患者さんの病をどうしたら治せるか、患者さんと一緒に喜びを味わいたい。それが医療の一端に加えて頂いた私達の醍醐味だと考えている。

以下発表時点の経過・資料。悪性腫瘍と悪性リンパ腫に対する証の発見推移

以下の確認はすべて糸練功にて行う。
1993.04;神仙1号(冬虫夏草を中心とした菌糸体)にて肝硬変から肝臓癌へ進行した患者さんの治療を行う
1993.12;神仙2号(白人参を加味)にて治療
1994.01;肺癌の患者さんでスクアレン証を確認。すい臓癌の患者さんでキチンキトウサン証を確認
1994.12;神仙3号(山薬を加味、神仙に風参の方意が加わる。同時に利水剤も加味)にて治療。悪性腫瘍に風毒を確認。風毒・ウイルス感染は、大腸の補であり、神仙にて改善。しかし、スクアレンの方がより強力。但し、山薬による胃負担あり、甘草加味で解決する。このとき糸練功によるスクリーングで蕾香に抗ウイルス作用を確認。
1994.12;自分の娘の喘息の体質改善の目的で創った延を食事の摂れなくなった末期癌の患者さんに使用。著効をおさめる。
1996.01;神仙5号(菌糸体の種類を増やす)を開発
1996.04;非上皮性悪性リンパ腫(B-Cell型)に加味帰脾湯加紫根証を確認。神仙と同時にリンパ腫にヨクイニン証確認。同時に上皮性腫瘍に第10胸椎右側(瀉。牡蠣仙・大腸経)、(補。加味帰脾湯加紫根)の反応穴確認
1996.05;腫瘍部分に瘀血証の存在確認
1996.11;悪性腫瘍に竜仙合牡蠣仙、風参合牡蠣仙の証を確認。同時に癌の証の一つ牡蛎仙加スクアレンが第12肋骨の端(左強、右弱)の反応穴に出ることを確認。黄精服用にて悪化するが牡蛎仙加スクアレン併用で可
1997.01;悪性腫瘍に芍薬甘草湯証確認
1997.01;神仙6号開発、5号より効果減、神仙5号に薬方を戻す。大腸の補に対し脾経の人参+山薬の混合物が効有り。混合物は大腸経に属す。混合物は風毒診に反応、スクアレンより強。(スクアレン100mg=混合物0.55gに相当)風参の原型が出来上がる。

1997.03。気仙原型の考案

1.小腸の補に対し菌糸体、白朮、茯苓がそれぞれ反応。白朮+茯苓の組み合わせ薬方例を参考とする。白朮:茯苓の比率は、茯苓飲4:5、苓桂朮甘湯1:2、その他大部分の薬方は1:1。

①白朮&茯苓の配合比率を決定。②菌糸体+白朮+茯苓の混合物の配合比率を決定2.大腸・小腸の補に対する配合比率。菌糸体と白朮+茯苓の混合物と人参+山薬の混合比率を決定

①小腸の補に対する確認。棒磁石で右手小腸の経絡を逆に流し、小腸を補の状態にする。更に、小腸の色(ピンク)を載せ小腸の補を強力にし、新処方で取れることを確認。神仙5号より強力。(神仙5号1g=気仙原型0.6gに相当)菌糸体+白朮+茯苓の混合物との適量診を行い、どちらがより強力か確認したところ気仙の方が強力
②大腸の補に対する確認。棒磁石と大腸の色(灰色)による確認。風毒診による確認。スクアレン、白人参+山薬、気仙を、適量診後、風毒診で比較。気仙が最も強く、ウイルスに対する効果もスクアレン以上と思われる。(スクアレン100mg=気仙原型0.3gに相当)出来上がった気仙原型は薬事法の関係で使用できない

1998.05;菌糸体服用による内風の発生を糸練功にて確認。癌患者は元来、風毒・内風として腎、心包、心、小腸(順に深くなる)の内風があると思われる。菌糸体服用により、腎より浅い所に膀胱、小腸の後に大腸に風毒が出現する。菌糸体に白参・山薬・甘草(風参の方意。現在の風参は気仙を造る過程でできた)を加える事で菌糸体による内風が生じなくなる。気仙1号の完成、以後神仙5号に代わり気仙1号を使用
1998.07;悪性腫瘍の患者さんに半夏厚朴湯証の多いことに気付く

1998.10。大村先生の発表に触発され竜仙の開発に着手

大村先生の発表内容、癌の診断と癌成立に特徴的な5の要素に対する東洋医学的分析

1.水銀等の重金属の局所への沈着
2.インテグリンオンコジンC-フォスAb2の増加
3.インテグリンα5β1の増加
4.アセチルコリンの減少
5.ウイルスの感染
*水銀等の排泄には中国パセリを1日4回食す。
*抗ウイルス剤としてEPA,DHAを投与。
*様々な電磁波によりバリヤが出来、薬が病巣へ届かない。
後頭部の延髄の心臓血管中枢部にプラスの気功エネルギーの入った紙又は、電池のマイナス部分を当てる。1~2分でバリヤが取れる。これより以下は木下の糸練功でのスクリーングと東洋医学的考察

1.水銀(重金属)排泄は肺(散)の瀉の治法大村先生は中国パセリを使用。木下の糸練功でのスクリーングでは、食品では春菊、日本茶等に効有り。特に春菊は効強い。(緑でアクが有る物に反応が強い傾向)生薬では、香附子、薄荷、陳皮、橘皮、升麻、紫蘇葉、鳥薬、降香、青皮、ヨクイニンに効有り。(特に中国パセリより香附子、青皮は効強い)竜仙1号は青皮、香附子、ヨクイニンを中心として6味、満量2g/Dにて薬方を組む。精油を逃さないために青皮を先に粉砕。篩にかけ、他の薬味と一緒に3分粉砕。
2.インテグリンオンコジンC-フォスAb2の増加、インテグリンα5β1の増加、アセチルコリンの減少に対して木下の糸練功によるCheckでは上記3つの生体内活性物質の増減は、小腸の補であり、気仙にて改善。
3.ウイルスの感染。木下のCheckではウイルス感染は、大腸の補であり、気仙にて改善。
4.後頭部延髄心臓血管中枢部には、木下のCheckでは補・陽・手掌・N極を当てる。
5.竜仙1号の青皮、香附子は、長期大量投与で小腸経瀉の異常が出現する。粘膜への影響と思われ、腎臓、胃、皮膚他に問題のある場合、副作用がでる可能性あり。甘草・大棗を加味する事により、副作用診はOKとなる。

1998.10;竜仙1号は更に大腸(膵臓・粘膜)への影響があることを糸練功にて確認。芍薬加味で解決
1998.11;香附子、芍薬は薬事法上問題があることが判明。竜仙2号の開発に着手
①青皮、香附子、ヨクイニンの方意に変わる薬味構成を考案。降香、青皮、陳皮、ヨクイニンの構成にて解決
②甘草、大棗、芍薬の方意に変わる薬味構成を考案。大棗、甘草、生姜の構成にて解決。大棗甘草生姜の比率は、香砂平胃散を参考とした。香蘇散、香砂養胃湯、香砂六君子湯の比率は不適
③上記二つの方意を10:4.6の比率で組む
*上記薬方は竜仙1号に対し、約15%の力価UP
*上記薬方では、膵臓への負担あり。上記薬方20gに対し、韓国産人参(特上)0.7g追加で解決。竜仙2号完成

1999.02;悪性腫瘍で竜仙2号加牡蠣の証を確認
1999.02;風参を完成
1999.06;MSコンチ(モルヒネ)服用により五志が悪化、半夏厚朴湯合茯苓飲証が出ていると考える例にあたった。後日、別な原因によって引き起こされていることが判明
1999.06;悪性腫瘍に牡蠣仙加キチンキトウサン証を確認。これが後に良塊仙となっていく
1999.07;悪性腫瘍に竜仙加キチンキトウサン証を確認
1999.08;良塊仙を開発(牡蠣仙、ヨクイニン、竜仙、キチンキトウサンの方意を含む)
1999.09;良塊仙に石決明、加味帰脾湯・太子参、竜仙合風参(風毒)、駆瘀血剤の方意を追加
1999.10;悪性腫瘍に風参加スクアレン証を確認
1999.11;風参合牡蠣仙を抗がん剤の副作用防止に対して使用
2000.03;悪性腫瘍と半夏厚朴湯証について(伝漢研に投稿より抜水)以前より、癌患者を観察すると半夏厚朴湯証を呈している人が多い事に気付いていた。これはモルヒネ投与による副作用、又は癌に対する不安からの証の出現と考えていた。
癌患者は反応穴において5ヶ所の反応を示す事が解っている。大きく分けて補法の適する反応。瀉法の適する反応である。補法の適する反応は第5胸椎横、瀉法の適する反応は第10胸椎横に集中している。これらの反応は強弱の差は在っても全ての癌患者に共通する反応である。
*補法の適する反応は臓腑では小腸の腑に属する。気仙にて改善できる。
*瀉法の適する反応は4ヶ所に分かれている。

1.腎の臓に属する瀉法;牡蠣仙で改善
2.肺の臓;竜仙で改善
3.大腸の腑;キチンキトウサンで改善
4.大腸の腑;ヨクイニンで改善
上記4ヶ所の瀉法は良塊仙だけでも全て改善する。
現在まで補瀉合わせ上記5ヶ所を治療点としてきた。これにより癌が消失し癌マーカーも正常化した患者さんが多数存在する。しかし中には糸練功による合数の改善を確認しているにも関わらず癌の縮小が見られない患者さんもいた。

今回、肺癌の患者さんで従来の理論に合わない例に遭遇したので報告する。漢方太陽堂旧薬歴

No.1834。55歳男性。

H10.08.08左肺癌。脊椎と心臓横のリンパ腫に転移。

手術も抗癌剤も出来ない状態との事。現在は放射線治療だけ受けている。
糸練功による病態の確認
小腸の腑の補。1.5合Ⅴプラス;癌本体。気仙1日2回投与
大腸の腑の平。3合Ⅴプラス;五志の憂。半夏厚朴湯1日1回
肝の臓の補。6合Ⅲプラス;リンパ腫。牡蠣肉エキス1回3T、1日1回
H10.10.13;大村先生発表による癌組織への重金属蓄積の排除に対応する為、竜仙開発。従来の薬方に竜仙追加投与
H11.09.21;上記4ヶ所の癌の瀉の反応穴、発見。患者さんは咳も無く元気
糸練功による病態の確認
腎の臓の瀉。3.5合Ⅰプラス。牡蠣仙適応
肺の臓の瀉。2.5合Ⅱプラス。竜仙適応
大腸の腑の瀉。1合Ⅲプラス。キチンキトウサン適応
大腸の腑の瀉。5合Ⅰプラス。ヨクイニン適応
この4ヶ所全てに対応する良塊仙開発。投与内容は以下の通り
気仙1日2回
良塊仙1日2回(気仙と良塊仙は同時服用)
十全大補湯合風参1日1回
スクアレン1回3P、1日2回
H12.03.09咳がまた出始める。麦門冬湯追加
糸練功による病態の確認
小腸の腑の補。5合+(1)。K菌糸体製剤適応
腎の臓の瀉。7.5合+(1)。Bミネラル製剤適応
肺の臓の瀉。消失。治療終了。R青皮製剤適応
大腸の腑の瀉。7合+(3)。キチンキトウサン適応
大腸の腑の瀉。消失。治療終了。ヨクイニン適応
小腸の腑の補。2合1+。麦門冬湯適応
1年7ヶ月前と比べ明らかな改善をしている。この結果だけを診ると治療終了に近い状態まで改善しているようである。
H12.03.15吐血、入院糸練功による病態確認と異なる。癌は改善されていないと思われる。他にCheckすべきポイントが漏れていると考えられる。
H12.03.23何回もこの患者さんを糸練功にてCheck。1合に半夏厚朴湯証が在るだけで他に異常が観られない。
驚いた事に何回か診ているうちに癌の病変部分より半夏厚朴湯証が出ている事に気付く。当然、五志の憂からも半夏厚朴湯証が出ている。しかも五志の憂からは2つの半夏厚朴湯証が検出される。
1つは本来この患者さんが持っている自律神経の異常。これは癌の病変部分より検出されない。もう1つは五志の憂・癌の病変部分両方から検出される半夏厚朴湯証。俄かに信じ難い。

(考察)

信じられない結果であるが、その後2人の癌患者で確認。2人とも癌の病変部分より半夏厚朴湯証が検出される。3人の癌患者の結果が偶然とは考えられない。その夜、布団に入り以前ヨードをゲル化した製剤で癌を治療していた先生を思い出す。
この先生は私の敬愛する矢数道明先生と交流を持たれ、また全国に広がった漢方研究会の創設に関わった先生でゲル化したヨードでご自分の息子さんの癌を治されたそうである。その後も何例かの例を手記にて発表されている。残念な事にヨードのゲル化技術を人に漏らすこと無く他界され現在は失われた製剤である。その後、私は亡くなられた先生の奥様より先生の手記を多数譲り受けたがヨードのゲル化技術は残されていなかった。

次の日の朝、ヨードと癌の病変部から発する半夏厚朴湯証との関係を調べる。これまた驚くべき結果が出る。元来の五志の憂の半夏厚朴湯証はヨウ素イオンで消えない。しかし癌の病変部より発している半夏厚朴湯証はヨウ素イオンにて消失する。
また風参2H+スクアレン4P同時服用でも消失する。更に数日前の新聞に癌の漢方治療として出ていた記事を思い出す。その中で「中国で癌に使われている”克癌7851”は本草綱目に記載の緑青・鉄くずが基本となっている」と記載されていた。(本草綱目の緑青は天然の岩緑青である)
早速、緑青(銅イオン)と鉄イオンをイメージ診にてCheck。鉄イオンには効果が認められないが銅イオンは手ごたえあり。更に半夏厚朴湯中の薬味を調べると厚朴に効果あることが判明。(和厚朴には効果無し、唐厚朴に効果あり)

これら厚朴、銅、ヨウ素は元来の五志の憂の半夏厚朴湯証には反応しない。しかし癌の病変部から発する半夏厚朴湯証には反応する事も判明。その強さも半夏厚朴湯、風参+スクアレン、厚朴一味、ヨウ素イオン、銅イオンの順に強くなっている。(半夏厚朴湯に関する考察)

半夏厚朴湯は水を利する。金匱要略には「身体皆腫る」と記載されている。人体の中で水のみを物理的に動かすのは不可能である。半夏厚朴湯の薬理には利尿ホルモン・抗利尿ホルモンが関係しているかもしれない。しかし他の利水の漢薬の作用を考えるとミネラルを始め生体内物質を動かす事により、それに伴い水が動いているとしか考えられない事が数多くある。
浸透圧現象でも水が動くのは水以外の溶質の濃度の違いによりその結果水が動いている。漢薬の利水剤の作用は水溶性生体内物質を動かしてバランスを整えているだけではないのか。その結果、水が動くのでは。そう考えれば新薬利尿剤の強制的利尿作用と漢薬の利水作用との違いが明確に理解できる。ヨウ素・銅もその生体内物質の1つなのでは。
ヨードの関係する甲状腺に半夏厚朴湯を多用するのは唯の偶然とは思えない。半夏厚朴湯証で無い人も甲状腺機能低下症になれば半夏厚朴湯証を呈する。(半夏厚朴湯は甲状腺機能亢進・バセドウ氏病、機能低下・橋本氏病両方に使われる)

(仮説)

癌の病変部はミネラル・ヨード・銅イオン等のバランスが崩れ、本来半夏厚朴湯証でない人にも半夏厚朴湯証が現れるのでは。これは癌の第6番目の反応・治療点として考えるべきだと思う。

2000.04悪性腫瘍に石決明証を確認

2000.05;悪性腫瘍と厚朴証について(伝漢研投稿より抜水)第6番目の反応・治療点(半夏厚朴湯、風参+スクアレン、厚朴一味、ヨウ素イオン、銅イオンで反応)は現在の所、糸練功で調べた全員の患者さんに確認されています。第6番目の反応・治療点として間違いないようです。
また銅イオンより更に強い薬味が解っています。銅イオンより黄精が強く、更に甜茶(バラ科)が効果は高いようです。
石決明が治療薬として浮上。通常、貝殻は表裏共に瀉です。しかし石決明のみは裏(内側)が瀉、表(外側)が補となっています。また、石決明は九孔と呼ばれる9個の穴が開いたのを薬用とします。この穴は稚貝より1年に1個づつ増えていきます。修治は水で練った小麦粉で殻を包み火で炙り、表の黒い部分を取り除き砕いて使用します。
石決明を調べると確かに強く、ほぼ完全に第6番目の反応が消えるようです。更に甜茶と石決明を合わすと更に効果が良い事が解っています。黄精と甜茶の配合は不可です。
この結果、第6番目の反応穴への薬味・薬方の強さは半夏厚朴湯、風参+スクアレン、厚朴一味、ヨウ素イオン、銅イオン、黄精、甜茶、石決明、黄精+石決明の順に強くなります。
第6番目の反応は従来の悪性腫瘍の瀉の反応穴(第10胸椎横)にも出ますが、反応が弱く見逃しがちです。五志でCheck後、同じ合数で癌の病変部より出ていないかCheckした方が確実です。新しい良塊仙には甜茶と石決明が組み込まれています。(良塊仙の方意中で牡蠣仙の方意がまだ弱いようです。牡蠣生姜の含量を増やせば解決するのでしょうけど、他の4つの方意への影響を考え、焼牡蠣を原料として検討中です。)
悪性腫瘍の第7番目と思われる反応が見つかっています。
骨盤横の白血病・悪性リンパ腫の反応穴に出ます。これも殆どの癌患者に共通した反応です。漢薬方意としては腎の補、加味帰脾湯証です。単一薬味としては紫イペー、太子蔘などで対応できるようです。免疫力(リンパ系)の低下だと思われます。
更に癌の患者さんには共通して風毒診があるようです。この風毒は強力で従来のスクアレンや風参では消失し切れません。
2000.05中国より持ち帰った菌糸体を糸練功にてスクリーングを行う。菌糸体の表裏(菌糸体の生体に作用する深さ)
1.アガリクス
2.金針ニョ
3.灰樹花
4.桑黄・メシマコブ
5.喉頭菌子実体菌糸体のg単位力価。

1.金針ニョ
2.喉頭菌菌糸体
3.アガリクス
4.灰樹花
5.桑黄・メシマコブ
6.喉頭菌子実体
喉頭菌+金針ニョで一方意が出来ることを確認。
従来の気仙8号を改良し、気仙9号を開発。これが現在の気仙の原型となる。

2000.05;良塊仙に黄精の方意を加味
2000.07;気仙の証に脾小腸と心小腸があることが判明。心小腸が本治で、脾小腸は標治。養生が悪いと脾小腸の気仙証が下がることを確認。
2000.08;癌の患者さんで良塊仙を服用している間に、持病の心筋梗塞が良くなる。その後、確認をしていくと心筋梗塞だけではなく脳梗塞、痔核、子宮筋腫、肝硬変(肝臓が硬くなり、門脈圧亢進から脾腫となり血小板が低下。良塊仙で脾腫が減少し血小板が上昇)などに効ある事が判明。
自分で創った薬方ながら広く瘀血に効く理由が不明。土鼈甲、ヨクイニンなどの薬味でこれだけの働きは考えにくく不思議。
2000.10;悪性腫瘍に黒芝証を確認
2000.12;悪性腫瘍に芍薬甘草湯加スクアレン証確認
2000.12;竜眼肉玄參が加味帰脾湯加紫根の代用となることが判明
2002.06;癌に肝寫の証あり、黄連+茯苓又は決明子で消失。第6胸椎右横にて反応