漢方学会・研究会での発表論文

漢方太陽堂が、東洋医学関係の学会・研究会にて発表報告した論文です。ご覧下さい。
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【糸練功】

2011年11月伝統漢方研究会第8回全国大会(日本・兵庫県淡路夢舞台国際会議場)

木下順一朗
福岡県福岡市・日本

[諸言]

糸練功を行っていると、センサーの労宮の使い方で、捉える信号が異なっていることに気付くことがある。
2010年の伝統漢方研究会で発表した「センサーの労宮を少し引く」事により、病的な異常しか捉えないことも分かっていた。センサーが緩むと自然治癒力と思える身体の微弱な反応も捉えてしまう。逆にセンサーが強すぎると、弱く深い反応は捉えることは出来ない。
この問題を解決するために、従来は「センサーの労宮で信号を引っ張る」と言う事も技術的に行ってきた。

【実験】

糸練功で黄耆を調べる
①身体への作用が緩やかな黄耆と身体への作用が激しい大黄を準備する。
②糸練功でみるとどちらもstを感じることが出来る。
③次に黄耆を糸練功で診ながら、最もstが強く感じるようセンサーの労宮を引く強度を調節する。

糸練功で大黄を調べる。
④黄耆を最も強く感じたセンサーの労宮を引く強度のままで、大黄を診ると大黄は糸練功で感知されない。
⑤大黄を糸練功で感知するには、黄耆の時よりも更に労宮を引く強度を高めなければ成らない。
⑥逆に大黄を最も強く感じたセンサーの労宮を引く強度のままで、黄耆を診ると黄耆は糸練功で感知されない。黄耆を感知するには、大黄の時よりも労宮の強度を緩めないといけないことが理解できる。

【労宮を引く強度】

作用の穏やかな黄耆は、労宮を引く強度がある程度弱いと感知されやすい。
逆に作用の激しい大黄は、労宮を引く強度がある程度強いと感知される。
この現象は、患者さんの病態を糸練功で診る時も生じていると考えられる。
激しい病態(急性病、標治部、表の病等)は、ある程度、労宮を強く引かなければ感知できず、緩やかな病態(慢性病、本治部、裏の病等)は、ある程度、労宮を弱く引かなければ感知されない。

【労宮を引く強度①~⑩】

木下は労宮を引く強度を便宜的に「①(弱)の強度」から「⑩(強)の強度」に分けて説明する。
①の強度は、手掌で風船をポ~ンと上に跳ね上げる位の労宮の力を想定している。
⑩の強度は、バスケットボールを床に突く位の労宮の力を想定し糸練功を取っている

労宮の強度①で取るべき証を、③の力で取ると、STの強さは弱く半分以下となり、ミスの原因となり判断を誤りやすい。また、⑩の激しい証を⑦の力で取っても同様である。
証を取る度に、毎回その証に応じた適切な労宮の強度に調節する癖をつけると、感度の良いSTを感じることができ、臨床では的確な判断をしやすくなると考えられる。

同時に労宮の強度を変化させ、適正な労宮の力で取ることにより、思わぬミスを防ぐことが出来る。例えば、同じ3合付近に2つの証が併存している場合、従来の糸練功の取り方では、2つの証の判断を僅かな合数のズレのみで区別していた。
労宮の強度の認識を持つと、例えば同じ3合の証でも、1つは労宮の強度③で、もう一つは労宮の強度⑦であったり、同じ3合の証でも明確に分類判断することが可能となる。
労宮の強度と証との関係を以下にまとめて図式化した。

【結語】

結語として、注意点を纏めた。

1、まず基準となる自分の①と⑩の労宮の強度を決めること。
例えば、白米・白ご飯で、脾がSTになる労宮の強度を①
(木下の場合は、風船をポ~ンと上げる位の強さ。)
大黄で「胃」がSTになる労宮の強度を⑩
(木下の場合は、バスケットボールでドリブルする位の強さ)
後は、患者さんの症状を見ながら、④の強度で、⑧の強度で等、自分で加減しながら力加減を覚えていく。
2、③の強度で取れる証は、③の強度が最もSTとSmの差が大きい。手掌診から腹診、適量診まで、最初から最後まで一定の労宮の強度③の力で取ること。
3、糸練功の腕の陰陽面の向きに注意すること。(2010年伝漢研大会、木下基調講演参考)
特に0合は、腕の陰陽面と身体の陰陽面が対峙した形。(掌を正面に向けた形)