漢方学会・研究会での発表論文

漢方太陽堂が、東洋医学関係の学会・研究会にて発表報告した論文です。ご覧下さい。
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【胆石・胆砂・胆泥】

2013年11月、伝統漢方研究会第10回全国大会(日本・セルリアンタワー東急ホテル)

金沖良子
福岡県福岡市・日本

[諸言]

今までの漢方相談の経験の中で、胃痛、ムカつき、背中から脇にかけての鈍痛やちくちく痛む・・・等の症状を訴えるが胃腸炎と間違えやすく、諸症状の原因が胆石・胆砂・胆泥であったというケースを多くみてきた。
近年、胆石・胆砂・胆泥のある成人は増えつつあるのではないだろうか。胆石・胆砂・胆泥についてまとめたのでここに報告する。

【胆のうについて】

胆のうの構造

胆のうは、肝臓の下にある小さな器官で、肝臓で作られる胆汁を濃縮・貯蔵するところです。胆のうの壁は、びっしりとしわ(粘膜ひだ)のよった粘膜と平滑筋層および奨膜から出来ています。薄いが弾力性があり、かなりよく広がります。
胆のうの頸部は胆のう管につながり、肝臓からくる胆管(肝管)と一緒になって総胆管となり、十二指腸に開口します。形は洋梨型(茄子型という人もいます)になっています。(長さは7~9cm、幅は2~3cm、容量は30~50ml)

胆のうの働き

肝臓から肝胆汁として排出された胆汁の約半分の量を蓄え、水分や塩分を吸収して1/5~1/10に濃縮した後、粘液を加えて食物摂取時にタイミングを合わせて十二指腸に送り出します。
脂肪分の多い食物が入ってくると、その中のアミノ酸、脂肪酸の刺激により、十二指腸、空腸から消化管ホルモン(コレシストキニン)が分泌され、これが胆のうの平滑筋を収縮させて胆汁を絞り出し、脂肪の消化を促進します。(食べ物が腸内に入ってきたときに、胆のうに溜めていた胆汁を出し、消化を助けます。主に脂っこい食事をとったときに多く出されます。)

【胆石・胆砂について】

胆石・胆砂(原因)

胆石・胆砂は胆汁中の成分の結晶です。胆石・胆砂は胆のう内に出来ます。その他、肝臓内に出来る場合もあります。胆石・胆砂の大半は、「コレステロール結石」です。胆汁に含まれるコレステロールが結晶化して結石が作られます。コレステロールの摂取過多や肝臓でのコレステロール生産量過多、腸の術後に胆のうの働きが鈍くなる、などが原因となります。
その他、「色素系結石」があります。色素系結石は黒色石とビリルビンカルシウム石です。胆管の炎症や胆道に細菌が入るなどが原因です。

胆石・胆砂(症状)

①胆砂は砂で小さくエコーでも写りません。数は無数に近いくらい多い場合が常です。自然に流れやすいです。

②胆石は大きくエコーで写り、数は胆砂に比べると少ないです。自然には流れ難いです。

③胆管を胆砂・胆石が流れている時は、痛みが生じ胃痛と間違える人が多いです。酷い人は便が白っぽくなる人もいて、その場合は肝臓に胆汁が欝滞し危険な場合もあります。

④胆管は膵臓に入り膵液と共に胆汁と膵頭部より十二指腸に排泄されます。

⑤そのような時は胆汁の流れが悪くなり、食物中の油の消化不良を起こし、胸焼け、下痢、軟便、ガス、下腹部の張りなどの症状が出ます。

⑥軟便は脂溶性(油の消化不良)の便ですので、便器などにペチャと引っ付きます。

⑦胆石・胆砂が流れ終わるとスッキリして軟便やガス、胸焼け、上腹部の痛みなども消失します。

⑧胆石・胆砂のある人は、症状から判断し、胃炎・腸炎と勘違いしている場合が多いです。

⑨また膵臓癌の原因になることもあります。

胆石・胆砂(対処法)

胆石・胆砂は胆汁中の成分の結晶です。放置していると減ることはなく、徐々に増えていきます。金銭草茯苓を小まめに飲んでいると、胆石・胆砂は溶けていきます。(金銭草10茯苓4+芍薬5)

胆石・胆砂排出時の発作痛には、芍薬甘草湯の頓服が有効です。
生大根や生パイナップルは膵液の流れを良くする働きがあり、胆汁も引っ張られて流れが良くなります。また利胆作用のある苦い漢方薬や食物も胆汁を流す働きがあるといわれています。
食事では、脂肪分やコレステロールを控えたほうが良いです。(マグロ、鰻、卵黄、牛肉、豚肉、ソーセージ、マーガリン、マヨネーズ、落花生、天婦羅、サバ等)
摂ったほうが良いもの
(魚介類に豊富に含まれるタウリン、たんぱく質、食物繊維、野菜、果物、豆類等)

【参考文献】

講談社編;からだの地図帳
木下順一朗著;伝統漢方研究会レベル2資料