癌・がん・悪性腫瘍患者さんとの「かけ橋」です。漢方相談

漢方太陽堂の患者さんに、毎月お配りしています。
漢方治療を少しでも御理解して頂きたく、漢方太陽堂での実際の例を毎月御紹介致します。患者さんにとって、少しでも御参考・励みになれば幸いです。
(注;東洋医学で言う臓腑経絡は、西洋医学の内臓とは異なります。)

【肝硬変・肝臓癌】と漢方改善例

肝硬変に肝臓癌を併発した主婦

(昭和9年生、女性。No.1699)

B型・C型混合肝炎に肝臓癌が出来た主婦の方。
初回来局時GOT124、GPT148、LDH455、血小板61000、TTT17.4、ZTT12.4、癌マーカーAFP7000。
検査数値上では肝硬変もあるようである。癌に対しては手遅れで抗癌剤の服薬もできない状態との事。糖尿病もありインシュリン16単位を注射している。顔色もくすみ悪い。
初回、肝機能改善目的で肝細胞の破壊を止める煎じ薬、癌に対する免疫力増強目的でK菌糸体製剤。腫瘍に対しポリープ等の塊を取る働きのある粉剤を投与。
8ヵ月後、CT検査で癌が縮小しているらしいとの事。腫瘍に対しK菌糸体製剤・R▵製剤、肝炎に対しU川玉金製剤に変方する。
11ヵ月後、癌マーカーAFPが20に低下、正常値に近くなる。本人は疲れも無く食欲も有り、太ってきて快調との事。
1年3ヶ月後、腫瘍に対しK菌糸体製剤・G□製剤、肝炎に対しU川玉金製剤、肝細胞再生目的でF曲蔘製剤に変方する。
1年6ヵ月後、病院の検査で肝臓癌が消失しているとの事。癌に対する免疫強化の治療方針を肝機能改善中心に変更する。腫瘍と肝硬変にG▵製剤、肝機能改善目的にU川玉金製剤、肝炎ウイルスに対し○○製剤、肝炎ウイルスと肝細胞再生目的でF曲蔘製剤に変方する。
治療開始より2年1ヵ月後、GOT73、GPT95、LDH392、AFP25で肝臓癌の心配は無くなったが、現在も肝硬変の改善のために上記薬方を服用中である。

悪性腫瘍(上皮性)に対する考察No.1

以前より、癌患者を観察すると半夏厚朴湯証を呈している人が多い事に気付いていた。これはモルヒネ投与による副作用、又は癌に対する不安からの証の出現と考えていた。
癌患者は反応穴において5ヶ所の反応を示す事が解っている。大きく分けて補法の適する反応。瀉法の適する反応である。補法の適する反応は第5胸椎横、瀉法の適する反応は第10胸椎横に集中している。
(詳しい反応穴の場所は木下反応穴資料を参考にして下さい)これらの反応は強弱の差は在っても全ての癌患者に共通する反応である。
*補法の適する反応は臓腑では小腸の腑に属する。K菌糸体製剤にて改善出来る。
*瀉法の適する反応は4ヶ所に分かれている。
1.腎の臓に属する瀉法:Bミネラル製剤で改善
2.肺の臓〃:R青皮製剤で改善
3.大腸の腑〃:キチンキトウサンで改善
4.大腸の腑〃:ヨクイニンで改善
上記4ヶ所の瀉法はG訶子製剤だけでも全て改善する。
現在まで補瀉合わせ上記5ヶ所を治療点としてきた。これにより癌が消失し癌マーカーも正常化した患者さんが多数存在する。しかし中には糸練功による合数の改善を確認しているにも関わらず癌の縮小が見られない患者さんもいた。
今回、肺癌の患者さんで従来の理論に合わない例に遭遇したので報告する。

カルテNo.1834・55歳男性。
H10.08.08、左肺癌。脊椎と心臓横のリンパ腫に転移。
手術も抗癌剤も出来ない状態との事。現在は放射線治療だけ受けている。
糸練功による病態の確認

  • 小腸の腑の補:1.5合Ⅴプラス、癌本体、K菌糸体製剤、1日2回投与
  • 大腸の腑の平:3合、Ⅴプラス、五志の憂、半夏厚朴湯、1日1回
  • 肝の臓の補:6合、Ⅲプラス、リンパ腫、牡蠣肉エキス、1回3T、1日1回

H10.10.13、大村先生発表による癌組織への重金属蓄積の排除に対応する為、R青皮製剤開発。従来の薬方にR青皮製剤追加投与
H11.09.21、上記4ヶ所の癌の瀉の反応穴、発見。患者さんは咳も無く元気
糸練功による病態の確認

  • 腎の臓の瀉:3.5合Ⅰプラス、Bミネラル製剤適応
  • 肺の臓の瀉:2.5合Ⅱプラス、R青皮製剤適応
  • 大腸の腑の瀉:1合、Ⅲプラス、キチンキトウサン適応
  • 大腸の腑の瀉:5合、Ⅰプラス、ヨクイニン適応

この4ヶ所全てに対応するG訶子製剤開発。投与内容は以下の通り
K菌糸体製剤、1日2回
G訶子製剤、1日2回(K菌糸体製剤とG訶子製剤は同時服用)
十全大補湯合F曲蔘製剤、1日1回
スクアレン、1回3P、1日2回
H12.03.09、咳がまた出始める。麦門冬湯追加。
糸練功による病態の確認

  • 小腸の腑の補:5合、+(1)K菌糸体製剤適応
  • 腎の臓の瀉:7.5合+(1)、Bミネラル製剤適応
  • 肺の臓の瀉:消失。治療終了、R青皮製剤適応
  • 大腸の腑の瀉:7合、+(3)、キチンキトウサン適応
  • 大腸の腑の瀉:消失。治療終了、ヨクイニン適応
  • 小腸の腑の補:2合Ⅰプラス、麦門冬湯適応

1年7ヶ月前と比べ明らかな改善をしている。この結果だけを診ると治療終了に近い状態まで改善しているようである。

H12.03.15、吐血、入院。糸練功による病態確認と異なる。癌は改善されていないと思われる。他にCheckすべきポイントが漏れていると考えられる。
H12.03.23、何回もこの患者さんを糸練功にてCheck。1合に半夏厚朴湯証が在るだけで他に異常がみられない。
驚いた事に何回か診ているうちに癌の病変部分より半夏厚朴湯証が出ている事に気付く。当然、五志の憂からも半夏厚朴湯証が出ている。しかも五志の憂からは2つの半夏厚朴湯証が検出される。
1つは本来この患者さんが持っている自律神経の異常。これは癌の病変部分より検出されない。もう1つは五志の憂・癌の病変部分両方から検出される半夏厚朴湯証。俄かに信じ難い。
(考察)
信じられない結果であるが、その後2人の癌患者で確認。2人とも癌の病変部分より半夏厚朴湯証が検出される。3人の癌患者の結果が偶然とは考えられない。
その夜、布団に入り、以前ヨードをゲル化した製剤で癌を治療していた先生を思い出す。この先生は私の敬愛する矢数道明先生と交流を持たれ、また全国に広がった漢方研究会の創設に関わった先生で、ゲル化したヨードでご自分の息子さんの癌を治されたそうである。その後も何例かの例を手記にて発表されている。残念な事にヨードのゲル化技術を人に漏らすこと無く他界され、現在は失われた製剤である。
次の日の朝、ヨードと癌の病変部から発する半夏厚朴湯証との関係を調べる。これまた驚くべき結果が出る。
元来の五志の憂の半夏厚朴湯証はヨウ素イオンで消えない。しかし癌の病変部より発している半夏厚朴湯証はヨウ素イオンにて消失する。またF曲蔘製剤2H+スクアレン4P同時服用でも消失する。
更に数日前の新聞に癌の漢方治療として出ていた記事を思い出す。その中で「中国で癌に使われている”克癌7851”は本草綱目に記載の緑青・鉄くずが基本となっている」と記載されていた。(本草綱目の緑青は天然の岩緑青である)
早速、緑青(銅イオン)と鉄イオンをイメージ診にてCheck。鉄イオンには効果が認められないが銅イオンは手ごたえあり。更に半夏厚朴湯中の薬味を調べると厚朴に効果あることが判明。(和厚朴には効果無し、唐厚朴に効果あり)
これら厚朴、銅、ヨウ素は元来の五志の憂の半夏厚朴湯証には反応しない。しかし癌の病変部から発する半夏厚朴湯証には反応する事も判明。その強さも半夏厚朴湯、F曲蔘製剤+スクアレン、厚朴一味、ヨウ素イオン、銅イオンの順に強くなっている。

(半夏厚朴湯に関する考察)
半夏厚朴湯は水を利する。金匱要略には「身体皆腫る」と記載されている。人体の中で水のみを物理的に動かすのは不可能である。半夏厚朴湯の薬理には利尿ホルモン・抗利尿ホルモンが関係しているかもしれない。
しかし他の利水の漢薬の作用を考えるとミネラルを始め生体内物質を動かす事により、それに伴い水が動いているとしか考えられない事が数多くある。浸透圧現象でも水が動くのは水以外の溶質の濃度の違いにより、その結果水が動いている。漢薬の利水剤の作用は水溶性生体内物質を動かしてバランスを整えているだけではないのか。その結果、水が動くのでは。そう考えれば新薬利尿剤の強制的利尿作用と漢薬の利水作用との違いが明確に理解できる。
ヨウ素・銅もその生体内物質の1つなのでは。ヨードの関係する甲状腺に半夏厚朴湯を多用するのは唯の偶然とは思えない。半夏厚朴湯証で無い人も甲状腺機能低下症になれば半夏厚朴湯証を呈する。(半夏厚朴湯は甲状腺機能亢進・バセドウ氏病、機能低下・橋本氏病両方に使われる)
(仮説)
癌の病変部はミネラル・ヨード・銅イオン等のバランスが崩れ、本来半夏厚朴湯証でない人にも半夏厚朴湯証が現れるのでは。これは癌の第6番目の反応・治療点として考えるべきだと思います。
(追伸)
方意さえ解れば、糸練功と薬味理論により処方を組むのは難しい事では在りません。厚朴、銅イオンより強い薬味を既に探し出しています。先生方の追試を至急お願いします。2000年3月24日、伝統漢方研究会へ投稿

悪性腫瘍(上皮性)に対する考察No.2

前回報告した第6番目の反応・治療点(半夏厚朴湯、F曲蔘製剤+スクアレン、厚朴一味、ヨウ素イオン、銅イオンで反応)は現在の所、糸練功で調べた全員の患者さんに確認されています。第6番目の反応・治療点として間違いないようです。
また銅イオンより更に強い薬味が解っています。銅イオンより黄精が強く、更に甜茶(バラ科)が効果が高いようです。
その後、ある先生から石決明が良いのではと指摘がありました。通常、貝殻は表裏共に瀉です。しかし石決明のみは裏(内側)が瀉、表(外側)が補となっています。また、石決明は九孔と呼ばれる9個の穴が開いたのを薬用とします。この穴は稚貝より1年に1個づつ増えていきます。修治は水で練った小麦粉で殻を包み火で炙り、表の黒い部分を取り除き砕いて使用します。
石決明を調べると確かに強く、ほぼ完全に第6番目の反応が消えるようです。更に甜茶と石決明を合わすと更に効果が良い事が解っています。黄精と甜茶の配合は不可です。
この結果、第6番目の反応穴への薬味・薬方の強さは半夏厚朴湯、F曲蔘製剤+スクアレン、厚朴一味、ヨウ素イオン、銅イオン、黄精、甜茶、石決明、黄精+石決明の順に強くなります。
第6番目の反応は従来の悪性腫瘍の瀉の反応穴(第10胸椎横)にも出ますが、反応が弱く見逃しがちです。五志でCheck後、同じ合数で癌の病変部より出ていないかCheckした方が確実です。

新しいG訶子製剤には甜茶と石決明が組み込まれています。(G訶子製剤の方意中でBミネラル製剤の方意がまだ弱いようです。牡蠣生姜の含量を増やせば解決するのでしょうけど、他の4つの方意への影響を考え、焼牡蠣を原料として検討中です。)
追記;
悪性腫瘍の第7番目と思われる反応が見つかっています。骨盤横の白血病・悪性リンパ腫の反応穴に出ます。これも殆どの癌患者に共通した反応です。
これに対し、別の先生が牡蠣肉エキス・笹多糖類製剤で第7番目の反応が消失する事を発見されました。(牡蠣肉エキスのみの製剤は不可)。漢薬方意としては腎の補、加味帰脾湯証です。単一薬味としては紫イペー、太子蔘などで対応できるようです。免疫力(リンパ系)の低下だと思われます。
更に癌の患者さんには共通して風毒診があるようです。この風毒は強力で従来のスクアレンやF曲蔘製剤では消失し切れません。第7番目の反応に対応できるように、K菌糸体製剤・G訶子製剤を現在改良予定です。2000年5月6日、伝統漢方研究会へ投稿

最後に

東洋医学の治療は、西洋医学と異なり体質改善や原因療法の傾向が強いです。それだけに、効果の出る時間に個人差があります。「かけ橋」・「多くの漢方改善例」が、患者さん同士の希望に繋がることを願っています。