漢方学会・研究会での発表論文

漢方太陽堂が、東洋医学関係の学会・研究会にて発表報告した論文です。ご覧下さい。
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【非結核性抗酸菌症(肺MAC症)】

2013年11月、伝統漢方研究会第10回全国大会(日本・セルリアンタワー東急ホテル)

林泰太郎
福岡県福岡市・日本

[諸言]

結核菌は「抗酸菌」と呼ばれる細菌の一種。結核菌以外の抗酸菌が起こす病気を「肺MAC(マック)症(非結核性抗酸菌症)」という。アビウム菌とイントラセルラーレ菌という、よく似た二種類の菌が起こす肺の慢性感染症で、酸に非常に強い菌となっている。

肺MAC(マック)症(非結核性抗酸菌症)をはじめとする抗酸菌の多くは、川や池、土、空気中のほこり、身近ではお風呂の残り水などに存在していて、過度なストレスなどで、身体の免疫系の働きが弱くなった時に身体内に生息するようになる。

日本では、抗酸菌による病気の約三割を非結核性抗酸菌症が占めていると言われている。

肺結核と違い、肺MAC症(非結核性抗酸菌症)は人から人に直接感染しないのが特徴だ。このため、患者を隔離したり、保健所に届けたりする必要はない。

「肺MAC(マック)症(非結核性抗酸菌症)」が近年、中高年の女性で急増している。欧米では一九八〇年代後半から増え始め、日本でも七七年からの二十年間で罹患[りかん]率が六倍余りに上昇した。国内の新規患者は年間八千人から一万人とみられている。

咳や痰が続く病気で、感染した初期の段階では、無症状で、病状も特に進行しないケースが多い。進行した場合、咳や身体のだるさからはじまって次第に息切れや熱、喀血などの状態を招くようになる。

抗生物質による治療が基本だが、完治させることは難しい。現在のところ西洋医学で使用されている薬剤には、クラリスロマイシン、リファンピシン、エタンブトール、ストレプトマイシンなどがあり結核に使うお薬と同じ物となっている。

【例1】<No.6400・70代女性>

既存の患者様からの紹介で難治性の病で困っているとの事で相談を受けた。
5年程前に発症して病院では、肺MAC症の診断を受け、肺の空洞が倍くらいになっていたとの事。両方の肺と言われて、痰はなく、咳は1日中で特に朝方に酷く咳が出るとの事だった。

2013/03/29
肺MAC症(左肺):小腸、陽証、0.8合、6+、風参加露蜂房甘草紅参
風参2蜂房末0.3甘草末0.9紅参末0.51を1日2回でお出しした。

2013/04/18
肺MAC症(左肺):小腸、陽証、3.2合、4+、風参加露蜂房甘草紅参
肺の繊維化:胆、陰証、5.3合、2+、瑠璃百仙
咳は、止まってきたとの事で先月は歩くだけできついとおっしゃっていたが1ヶ月でマスクも外して来店されるようになってきていた。歩く時にきつかったが、呼吸も楽になってきた。
肺の繊維化も糸練功にて確認した為、合数がどう変化するのか記録のみ残した。

2013/05/30
肺MAC症(左肺):小腸、陽証、4.3合、3+、風参加露蜂房甘草紅参
肺の繊維化:胆、陰証、5.6合、2+、瑠璃百仙
咳は、まだ出る時があるが朝にいつも出ていた咳はなくなって来たとの事。
肺の繊維化も確認したら、合数は改善している為炎症が取れる事で繊維化も取れているのかもしれない。

2013/06/29
肺MAC症(左肺):小腸、陽証、5.2合、2+、風参加露蜂房甘草紅参
肺の繊維化:胆、陰証、5.9合、2+、瑠璃百仙

MAC症(左肺)の合数も大分改善して5合を越えてきた。
治療を始める前は、血痰は出ていたが今は出ないようになってきているとの事。治療は、順調に思われる。

2013/07/30
肺MAC症(左肺):小腸、陽証、6.2合、2+、風参加露蜂房甘草前胡
肺の繊維化:胆、陰証、6.2合、2+、瑠璃百仙

肺MAC症(左肺)の合数を調べた所、6合を越えて順調に進んでいた。
薬味を調べてみた所、紅参より前胡を加えることでスムースが強くなった。
露蜂房による毒消しを紅参でしていたが、前胡の方がより副作用による肺や腎臓への影響が少なくなるように思えた。

【例2】<No.2295・70代女性>

元々の病気は、胸椎後縦靭帯骨化症で来られていた患者さんで首のつっぱり、肩の痛みや手足の痺れを訴えていた。去年の12月に肺のレントゲンを撮った所、肺MACという診断を受けた。

2012/12/08
肺、陽証、3.4合、露蜂房甘草紅参
露蜂房末0.3甘草末0.18紅参末0.51を1日2回でお出しした。

2013/04/24
肺、陽証、2.9合、露蜂房甘草紅参
少し間が空き3ヶ月程間があったが左肺をレントゲンで撮った所、病院にて良くなっているとの診断を受ける。

2013/05/29
肺、陽証、3.4合、露蜂房甘草紅参
合数の上がりが悪く菌が残っている感じはするが、レントゲンの結果は良くなっている。

2013/06/28
肺、陽証、4.9合、露蜂房甘草紅参
レントゲンの結果は良くなっていて、今回は糸練功の上がりも良かった。

2013/07/31
肺、陽証、5.6合、露蜂房甘草紅参
症状もなく順調に改善していた。こちらの患者さんでは前胡ではなく紅参の方がスムースな為、紅参にて投薬した。
木下先生が確認した所、肺MAC症(非結核性抗酸菌症)に対しての処方として露蜂房末0.3甘草末0.18紅参末0.51の証を確認した。
【例1】の患者さんには、これに風参を加える事で、よりスムースになり菌に対する免疫の能力が上がったのかもしれない。

【考察】

薬味の説明。
露蜂房→蜂の巣となっていて、元々リウマチにも使っている。
抗菌作用や免疫に対しても作用して免疫の能力を上げる作用がある。
抗菌作用にて歯槽膿漏等にも使用したりもする。
紅参、前胡→露蜂房の副作用防止にもなる。
露蜂房には、粘膜を刺激する事で肺障害や腎障害が知られているがその肺障害や腎障害を除くと思われる。
また、全蝎の肝障害の副作用にも紅参を入れることで副作用を防ぐと考える。
風参→免疫を高める事もあり、抗菌薬の薬味に風参を加える事で副作用が軽減して効果が上がる。
抗菌薬の薬味→桔梗、忍冬、撲ソク、金銀花、露蜂房、連翹。
西洋の抗菌剤の許容スペクトルが違う様に漢方も範囲が違う。
今回の肺MAC症には、露蜂房が合う為露蜂房を使用。
露蜂房は、どちらかというと比較的大きい菌に使用することが多い。

【参考資料】

木下順一朗著;古方これだけ覚えれば絶対だ、伝統漢方研究会

【使用した薬剤】

甘草;1日量0.18~0.9g→松浦漢方㈱
紅参;1日量0.51g→高砂薬業㈱
露蜂房;1日量0.3g→㈱ウチダ和漢薬(中国製)
前胡;1日量0.37g→㈱ウチダ和漢薬
風蔘;1日量2包(植物末・濃縮末加工食品/原材料:澱粉、オタネニンジン、山芋、甘草)販売者:有限会社M.D.R