患者さんとの「かけ橋」です。漢方相談

漢方太陽堂の患者さんに、毎月お配りしています。
漢方治療を少しでも御理解して頂きたく、漢方太陽堂での実際の例を毎月御紹介致します。患者さんにとって、少しでも御参考・励みになれば幸いです。
(注;東洋医学で言う臓腑経絡は、西洋医学の内臓とは異なります。)

【痔瘻(痔ろう)】と漢方改善例

痔瘻(痔ろう)-肛門周囲膿瘍と痔核をお持ちの男性

(昭和55年生、男性。No.1453)

数年前、20代の男性から相談を受けた。

肛門周辺にしこりがあり、膿や血が出る時がある。病院へは行っていないが痔瘻(痔ろう)ではないかとの相談だった。肛門周囲膿瘍や痔瘻があるとすると、糸練功で慢性化した化膿の状態を確認する。調べてみると、化膿の状態が出現していた。

痔瘻は肛門内部に化膿層が拡がり、膿の通り道となるろう管が出来る疾患である。内部に拡がるほど抗生物質が効きにくくなり、外科的な手術でしか治す手段がないとされている。肛門周囲膿瘍や痔瘻に対して、漢方太陽堂で独自の治療法を見出し、漢方薬の内服で完治した例が多数ある。数種類の漢方薬を組み合わせ、排膿を促し、化膿を少しずつ縮小させる。

この方は漢方治療開始から1年後、排膿の後にしこりが小さくなったが、また新たな化膿が見つかった。その後、今までにない大量の出血が出た。糸練功にて確認すると、この出血は痔核によるものと思われた。

痔核の原因である肛門のうっ血を改善する治療も平行して行った。不摂生すると腫れが大きくなり、酷い時は高熱も出る。症状が悪化した時は特に養生しながら、根気よく漢方薬を続けられた。

数ヵ月単位で少しずつ改善するが、なかなか根が深い。肛門のうっ血改善剤を4年間、肛門周囲膿瘍の漢方薬を6年間服用され、無事に漢方治療と体質改善を終えた。

痔核と痔瘻を併発している男性

(昭和38年生、男性。No.3660)

排便時に痛みと出血と脱出、及び膿が出て困っているという男性が相談に来られた。

この方は、高校の頃より排便時に出血があり、大学生になると痔核の症状も出てきた為、手術により切除した。その10年後、今度は痔瘻も併発した為、2度目の手術を行なった。

今回また症状が出てきてしまい、ご本人様が3度目の手術は避けたいと思い、漢方薬で根本的に治療をしたいとご相談に来られた。

問診と糸練功により、痔核の証として「肺の臓・陽証、乙字湯加減証」、痔瘻の証として「脾の臓・陰証、托裏消毒散加露蜂房証」が確認出来た。この症状に対して漢方薬を服用して頂く事になった。

痔核は小さくなり出血もだいぶ少なくなってきたが、痔瘻の症状に関しては、排膿が続いており変化がないと言う。やはり、症状が出始めてから長い年月が経っているので、自覚症状の改善が見られるまでに時間が掛かるのではないかと考えられた。

また、この方は調子が良くなると、食事で無理をしてしまう事があり「経絡病(一時的悪化の急性状態)」が時々確認出来た。

現在でも時折、痔核・痔瘻の症状が少し出る事があるが、確実に改善して来ている。

ご本人にも養生の事を理解して頂き、再発防止に向け私共と二人三脚で取り組んでいる。

排膿を続ける痔瘻

(昭和32年生、女性。No.362)

半年前から肛門に違和感があり、触ると痛いおできのようなしこりが出来た。その3ヵ月後に膿が出て小さな穴が開き、痛みは殆ど無くなったとの事。また、便が硬い時には排便時に少し痛みがあり少量の出血もあったそうである。

糸練功による反応では、痔ろうの時によく現れる千金内托散加減法証を確認。本来、煎じ薬による治療法となるので煎じ薬をお勧めした。

2ヵ月後、出血はあるが痛みや膿はかなり軽減されてきた。

更に半年後、押すと痛いが、日常生活では殆ど痛みを感じなくなってきた。その後は、疲れた時や不摂生気味の時以外、症状は殆ど治まっている状態がしばらく続いた。途中、痔核のような証も確認し、肛門の瘀血を改善する瘀血改善剤も加えて治療を進めた。

全体的に調子は良いものの、たまに膿や出血があるとの事。日常生活での養生によって病状は大きく左右され、また根の深い病態なので、完治には時間を要すると思われた。

その後も患者さんは、根気よく漢方薬と養生を続けられ、症状が殆ど無くなってきた。合数も10合で安定するようになり、それから半年後、漢方薬を廃薬した。

一般的に、痔ろうは西洋医学では手術でしか治らないとされている。漢方治療では治療に時間を要するが、根気良く続けていくと有効であると思えた例である。

15年続く痔ろう

(昭和27年生、男性。No.976)

15年ほど前に左臀部が腫れあがり激痛、「臀部膿瘍」と診断され切開。排膿後は切開跡が自然に癒着。3年置き位に症状を繰り返す。その都度、切開の処置をした。5年前、同じ箇所が腫れあがったが、2箇所から自然に膿が排出。

腫れがひいた後も排膿は微量ではあるがそのまま止まらず、1年以上通院し、肛門内の触診・CT・MRI、抗生物質の投与、膿の培養等を行ったが膿の発生原因は特定できず。痔婁の可能性大と言われ、痔の専門病院へ行った。

左臀部皮下5cm程のしこりがあり、3箇所から常時膿が出続けており、風呂を出た後ガーゼで覆っている。熱、痛みは無い。

糸練功で確認する。左臀部、脾の陰証-0.5合4+、千金内托散加露蜂房証を確認。△△エキス6錠加〇〇末0.4を服用。

4ヶ月後、4.5合1+膿の量が減ってきた。

12ヶ月後、右腋腫瘍ができ激しく垂れた後、排膿する。糸練功で確認する。経絡病・脾の陰証。千金内托散加露蜂房証。△△エキス加〇〇末で対処できる事を糸練功にて確認。

24ヶ月後、9.9合+1体調は頗る快調との事。

肛門の膿は抗生物質も届きにくい奥深い所で拡がり、西洋医学では手術しか方法がないと言われているが、漢方太陽堂の漢方治療により改善している例は多数ある。

最後に

東洋医学の治療は、西洋医学と異なり体質改善や原因療法の傾向が強いです。それだけに、効果の出る時間に個人差があります。「かけ橋」・「多くの漢方改善例」が、患者さん同士の希望に繋がることを願っています。