患者さんとの「かけ橋」です。漢方相談

漢方太陽堂の患者さんに、毎月お配りしています。

漢方治療を少しでも御理解して頂きたく、漢方太陽堂での実際の例を毎月御紹介致します。患者さんにとって、少しでも御参考・励みになれば幸いです。

(注;東洋医学で言う臓腑経絡は、西洋医学の内臓とは異なります。)

【不妊症治療】と漢方改善例

不妊症治療で自然妊娠を望んでる30代女性

(昭和51年生、女性。No.3289)

30代婦人より不妊症治療の相談を受けた。自然妊娠を望んでいる。

病院の検査では、潜在性高プロラクチン血症、黄体機能不全、右卵管閉塞、左卵管狭窄との診断が出ていた。また、右側卵巣に嚢腫があり、卵巣が腫れていた。病院でホルモン療法を行っていたのだが妊娠に至らず、卵管形成術の選択を迫られていた。

基礎体温表も乱れ気味。ホルモン剤の影響と思われた。暫くの間、漢方治療で体質を整える事とした。漢方薬を飲み始めてすぐ便秘が解消され、5ヶ月後には生理量も増えてきた。基礎体温表も綺麗な二層に分かれてきた。

9ヵ月後、卵管造影を行ったところ左卵管は途中で詰まっていたものの、右卵管は綺麗に通っていた。病院へは検査のみ通っている。排卵の状態はまだ不安定で、卵の数も少ない。また、頚管粘液が少なくフーナーテストでは精子の動きが悪かった。卵巣機能に対しての効果を高めて漢方薬を投薬した。

その後、人工授精を6回行ったが妊娠に至らず。卵管は通っているのだがピックアップ障害の可能性があるとのこと。体外受精に進む決断をされた。

漢方治療を始めて丁度2年後、体外受精に踏み切られた。採卵の際には9個の卵が取れた。3回の体外受精を試みたがいずれも陽性反応は出なかった。漢方治療を開始して4年が経とうとしていた。LHが高く変性卵が出来る。卵巣機能を高める漢方薬に絞り込み治療を続けた。

2ヵ月後、ホルモン数値は改善され胚盤胞移植を行った。6年の年月を経て、無事に妊娠。安定期まで見守らせて頂いた。

不妊症治療-アトピー性皮膚炎の不妊症のご婦人

(昭和52年生、女性。No.4389)

アトピー性皮膚炎をお持ちの婦人から不妊症の相談を受けた。

生理直前から生理中にかけてアトピーが酷くなる。食事に偏りはないが、幼少の頃から便秘がち。婦人科では不妊の原因は指摘されていなかったが、プロラクチンが高値だった。東洋医学的な不妊の治療点を3箇所確認。便秘改善も併せて治療を進めた。

1ヵ月後、生理痛がなくなった。2ヵ月後にはプロラクチンの値が正常値になってきた。漢方治療を開始する3ヵ月前から病院へ通っていた。

タイミング療法をとっているが、排卵誘発剤の回数やホルモン剤の種類が徐々に増えてきた。病院ではホルモンを補充しても黄体ホルモンがなかなか上がってこないとの事。病院での不妊治療は1年半続けられた結果、卵の質がどんどん悪くなり、中断された。

黄体ホルモンの投与は、東洋医学では瘀血が強くなる。漢方太陽堂では、この方の不妊症とアトピーの原因は瘀血と捉えていた。便通は徐々に良くなってきたけれど、生理前にはアトピーとともに悪化する。

今まで瘀血(瘀血)改善剤を用いてきたが、喘息やアトピー体質の方は妊娠しにくいため、免疫系からホルモンを動かす方向へ漢方治療を切り替えた。

その後、漢方治療だけで生理前にあった不正出血がなくなってきた。漢方治療開始から約2年が過ぎた頃、妊娠の報告を受け、元気な男の子をご出産された。

不妊症-卵管狭窄にて体外受精を勧められた40代女性

(昭和41年生、女性。No.2114)

産婦人科から不妊症という診断を受けた女性の相談を受けました。

結婚後、妊娠しないので年齢(42歳)の事を考慮して産婦人科へ行ったとの事。その結果、卵管が狭く自然妊娠は難しいので体外受精を薦められたという事でした。

しかし、この方は体外受精ではなく自然妊娠をご希望され漢方太陽堂へのご相談となりました。

糸練功で調べると不妊症に関する治療ポイントが3箇所ありました。

漢方薬を飲み始めた頃は、なんとなく体調が良いという事でした。日頃の生活が大切という事をよくご理解頂かれ、食事や規則正しい生活などを心掛けて過ごすよう気を配っていらっしゃいました。

更に、焦ってしまう気持ちも良くないと認識し、養生なども強く意識し過ぎない程度にリラックスできる工夫もなさっていたようです。

その後、体調に目立った変化というと、生理痛が軽くなった程度で月日が過ぎていきました。

しかし、服用7ヶ月後に妊娠判定陽性の知らせを受け、私たちはとても嬉しい気持ちでいっぱいでした。

その後は妊娠安定の為に新たな漢方薬をお飲み頂き、順調にお腹の赤ちゃんは育っていきました。

自然妊娠を希望の女性

(昭和42年生、女性。No.923)

不妊で悩む30代半ばの女性から相談を受けた。5cmの卵巣嚢腫があり、病院で卵管が詰まっていると言われ体外受精を進められていたが、悩んだ末、自然妊娠を希望。

糸練功では卵管部に脾の陰証と肺の陽証を確認。その他の不妊に関する証の確認はなかった。

脾虚と瘀血を改善する漢方薬を選薬。

約2ヶ月後、前回の生理より42日経ってもまだ生理が来ない。今までは28日~32日周期で順調に生理があった。体が変化しているのかどうか、不安げなご様子。左の下腹が時々生理前のように痛む事があり、お腹が張っている感じがするとの事。

糸練功で確認した所、妊娠の可能性あり。瘀血改善剤を休止し、妊娠検査を勧めた。

3ヶ月後、産婦人科にて妊娠5週目との診断。特に流産の恐れはないと言われた。

妊娠中、下痢や悪阻で5キロ程痩せられたが、流産防止の安胎薬を続け、その後悪阻で辛そうな時期もあったが無事出産。

妊娠前と後も色々と不安があったが、無事出産され、今はお子様共に元気にお過ごしのご様子。

数多い不妊相談の中で、漢方治療をはじめてから比較的早く妊娠に至った例である。

10年来の無排卵の女性の不妊症治療

(昭和43年生、女性。No.2655)

不妊症の女性の相談を受けた。

女性は当時35歳。10年程前から病院では無排卵と言われていたそうである。5年前に一度、排卵誘発剤で妊娠したとの事。

問診を行うと、低温期が20~45日と長めで安定していない。高温期も体温が上下し安定していない。病院では卵胞が成長する前に黄体へ切り替わっていると言われたそうである。また顏が赤く下半身が冷えるとの事。漢方医学で言う瘀血の体質と思われる。

糸練功で確認すると胆の腑陽証0.5合に瘀血を確認。また瘀血と相反する血虚を肝の臓陰証9合に確認。

まず瘀血の治療だけを開始する。瘀血を改善する駆瘀血剤を選薬。

1ヵ月半後、3.5合に改善。

5ヵ月後、8.5合に改善。しかし肝の血虚が7.5合に低下。血虚改善剤を追加。

6ヵ月後、今回の生理は9日間続き、茶褐色の生理だったそうである。しかし不思議と生理痛はなかったそうである。

8ヵ月後、瘀血は9.5合、肝の血虚10合に改善。この時、胆の陰証0.5合に陰の瘀血を発見。太陰病と判断し隂の瘀血改善剤を追加する。

9ヵ月後、瘀血9.5合、血虚10合、陰の瘀血7合に改善。

11ヵ月後、妊娠。

36歳後半での出産となったが、この女性は複雑に病態が重なり、それを一つ一つ丁寧に取り、妊娠にこぎ着けた例である。

最後に

東洋医学の治療は、西洋医学と異なり体質改善や原因療法の傾向が強いです。それだけに、効果の出る時間に個人差があります。「かけ橋」・「多くの漢方改善例」が、患者さん同士の希望に繋がることを願っています。